暇をもてあます

俺、これまででずにーしーを拝まざりければ、心うく覚えて、けふ思ひ立ちて、ただひとりまうでけり。池などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
さて、かたへの人にあひて、「年ごろ思ひつること、果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて、おかしくこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに船へ乗りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、海へ参ることこそ本意なれと思ひて、船までは見ず」とぞ言ひける。
すこしのことにも、先達はあらまほしき事なり。